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父子家庭ラプソディ 12

平成18年9月に、僕たち3人は引越しをすることになった。
行先は僕の生まれた実家で、僕にとっては慣れ親しんだ町だったが、子供たちにとっては、縁もゆかりもない初めて住む町だった。

下の子は幼稚園をすでに辞めていたため、引っ越した後にどこか新しい幼稚園に通うということはなかったが、上の子は小学生だったため、9月の新学期から新しい小学校に通うことになった。

9月も1週間ほどたったころだったと思う。

引越しも終わり、新しく通うことになる小学校にも手続きを済ませ、新しい担任の先生とも顔合わせをし、いよいよ転校生として初日を迎えた日、僕は下の子を連れ3人で小学校に行った。

下の子は、初めて行く学校に興味津々で、いろんなところを珍しそうに眺めていた。
上の子はさすがに緊張した面持ちで、そわそわしながら不安げな表情を浮かべていた。

僕たちは教室に行く前に図書室でいったん待機ということで、しばし待たされていた。
朝の9時ごろだったと思う。
図書室から見える校庭には誰も居なくて、夏の日差しに生い茂った緑色の葉っぱが揺れていた。

「ああ、これからいよいよ新しい生活が始まるんだなぁ・・・」
と、僕でさえ思ったものだ。
人生で生まれて初めて経験する転校を、今まさに乗り越えなければいけない小学3年生の長男の肩を、僕は抱きかかえた。
2,3度肩を叩いては、「大丈夫、今日から楽しいことばっかりだからな」
そう、声をかけた。
長男坊は、それどころではないといった雰囲気で、相変わらずそわそわしていたっけ。

15分くらい待たされただろうか、先生が僕たちを呼びに来て、いよいよ教室へと案内されることになった。
静かな校舎に僕のスリッパの音だけが、不自然に響き渡っていた。
先生が先頭を歩き、僕が下の子を手を引いて歩き、その後ろを長男坊が歩いた。

階段を上り、廊下の中ほどまで歩いたところで、おそらく気配を感じたであろう、新しいクラスメイトのみんなが、大歓声で僕たちを迎え入れてくれた。

おそらく、転校生がやってくるということは事前に先生から聞いていて、今まさに先生がその転校生を連れてくるのだということも分かっていたに違いない。

小学3年生にとって、自分たちのクラスに転校生がやってくるということは、それはそれは一大イベントだったろう。
興奮を抑えられないようなそわそわした空気は、歩いている廊下にまで伝わっていた。

担任の先生は若い男の人で、運動ができそうな活発なイメージ。
先生は長男坊の頭を軽くなでると、背中を叩き教室の中へと誘導し、教室の扉を閉めた。

長男坊が教室に入ると、先生は僕たちを見てうなずいたような、会釈をしたようなしぐさをし、教壇へと登って行った。
連れられた長男坊はどこかぎこちない様子をしていたが、クラスメイトの大歓声に少し気が楽になったのか、にっこりと笑顔を見せていた。

それを見て、僕は安心した。
閉められた教室の引き戸のガラス窓からクラスを見渡すと、クラスメイトが僕たちに手を振っていた。
僕も手を振りかえして、よろしくお願いしますと、頭を下げた。
それに気づいた長男坊がこっちを見たから、僕は手を振って数回うなずいて見せた。
「頑張れ、頑張れ」と、僕は言ったつもりだった。

下の子の手を引き、来た道を引き返しているときも、教室から漏れる歓声に、僕は少しうれしかった。
なんとかうまくやっていけるかもしれない。
そう、思ったからだ。

親として、子供が学校で楽しく過ごせるか、過ごしているかということは気になるところだ。
それが転校となるとなおさらだろう。
でも、なんだか肩の荷が下りたような気持ちになったことを覚えている。

僕たちは車に乗り家に帰り、長男坊の帰りを待っていた。
夕方3時を過ぎたころに、長男坊は担任の先生とクラスメイト3人とともに歩いて帰ってきた。

「初日だったんで、僕が一緒に帰りました」
と、先生は言った。
もう、お友達ができたんですよ、と言って先生は笑って見せた。
先生にお礼を言って、長男坊を家の中に入れると、
「僕、遊びに行ってくる」
と言って、長男坊は一緒に帰ってきた3人と遊びに行ってしまった。

彼にとって、それはどんなに心強いことだったろう。
彼もまた、肩の荷が下りたのかもしれない。

転校することにあれだけ抵抗し、ふてくされていた長男坊も、見事に自分の力で新しい道を切り開いてみせた瞬間だった。
僕はあの日のことを今でも忘れない。
小学校3年生の長男坊が、なんだかとてもたくましく立派になったように思えて、うれしくてたまらなかった。

あの日、一緒に遊んでくれた佐々岡君、大橋君、苗字は失念してしまったが、レン君。
ありがとうね。
高校生になった今でも、仲良くしてるみたい。

僕はこの日、多くのことを学んだ。
それは、子供の可能性と順応性、そして何よりも、これから先僕たちはまだ先に進めるんだという希望。

子供たちの力を借りて、子供たちと一緒に乗り越える。
それでいいと思った。
このへんてこな父子家庭生活を、子供たちと一緒に乗り越えて、一緒に成長しよう。

この1日は、僕にささやかな勇気と希望をくれたんだ。
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プロフィール

スパイク

Author:スパイク
茨城県ひたちなか市在住41歳。2人の息子と男3人暮らし。
子供たちもだんだん大人になり、それぞれの人生を歩もうとしています。最後父ちゃんももうひと踏ん張りで、子供たちの成長の記録と父子家庭パパとしての考えを書き留めておこうと思っています。

執筆、講演、お仕事の依頼はメールフォームよりお気軽にどうぞ。
コメントもお気軽に送って下さい。とっても励みになるんで・・・^^




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