>

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Tag:スポンサー広告 

父子家庭ラプソディ 13

平成18年9月。母は死んだ。

結局は年末に手術した時に医者が言ったように、この病気で母は命を落とすことになった。
自宅近くの病院で、朝方から危篤状態となりそのまま個室へと移されささやかな延命治療を施したのち、明朝家族が見守る中息を引き取ったのだった。

いよいよ母が死んでしまうとなってから、夜も寝ずに病室へと詰めていた僕は、それでも家においてきた子供たちが心配で、数時間に1度は、夜中家に戻り子供たちの寝顔を確認した。
母の命がいつまでもつのかは分からなかったが、明朝になれば子供たちを連れて病院へ行くことになり、まだ幼い子供たちに人が死にゆくさまを見せていいものなのかどうか、僕はずっと悩んでいた。

子供たちは、人の死をどう感じるのだろうか?

僕ひとりしかいない親子3人での暮らしで、これから先これが原因で何らかしらの傷のようなものを子供たちの心に負わせてしまったら、僕はひとりでそれをケアしてあげられるのだろうか、子供たちは受け入れられるのだろうか。
そんなことを、いよいよ母の死と直面した僕は、考えていた。

代わる代わる訪れる客に挨拶をし、すっかり身動きをしなくなった母をずっと眺めていた。
兄は母の傍らに座って手を握り、ずっと何かをつぶやいていた。
「お前も母さんに声かけてやれ」といろんな人に言われたけど、僕はなぜかその輪に入っていくことができず、ベットがひとつしか置いてない、その割には無駄に広い病室の隅っこで、ぼんやりしていた。

死にゆく母にかける言葉が浮かばなかった。
それは僕の幼い頃の記憶や、いま自分が置かれている環境、精神状態、兄弟の確執とかそんなものがごちゃまぜになり、自分の感情に蓋をして常に平静、無感情を装うことを覚えて生きてきた僕の、最後の悪あがきだったのかもしれない。

みんな僕の前からいなくなればいい。
本当にそう思っていた。

それは一人ぼっちになっていくことへの恐怖と、受け入れなければいけない事実との狭間で、そうやって自分勝手にねじ曲げた現実を肯定しなければ立っていられない、病的な精神状態だったのだと思う。

立て続けに環境が変わりすぎたのかもしれない。
やらねばならぬことや、守らねばならぬものが多すぎて、僕ひとりではとても支えきれないでいた。

もし、母を失うというショックを、もろに感情として受け止めてしまったら、とても子供達2人をこれから先、いや、また明日から育てていくことなど、もうこれっきりできなくなってしまうかもしれないと思った。

母は死んでしまうけど、僕は生きなければいけない。
僕がしっかりしなければ、子供たちは生きていけない。
だから、子供たちのために、自分が自分でいられなくなるような、立って歩いていくことができなくなるような、そんな感情は自分の中に持ってはいけない。

これは、ひとつの事実として受け止めよう。
母が死んだ。
それだけのことだ、と。

僕は子供達2人を育てるために、自分の人生も、自分の感情も捨てた。
わからないだろう、この気持ちは。

たったひとりで子供を育てるということはつまり、子供を育てるということ以外の全てのものを、根こそぎ捨ててしまうことだった。
そこに全てを集中しなければ、絶対に代わりのいない自分という存在を保つことはできなかった。

そして子供たちも大きくなりいずれは僕の元から去っていく。
そしたらほんとうに一人ぼっちになるんだなと、様々に交錯した感情の中、僕は考えていた。

僕も子供たちも、これから先多くのものを失うだろう、父親一人しかいない3人暮らしでは、手に入れるものより失うものの方がはるかに大きいはずだ。

失うということ、または奪われるということ。
それを受け止めて糧にしなければ、わざわざこんな暮らしをしている意味もない。
子供たちにとって、それはとても酷なことなのだが、悩んで悩んで、苦しんで苦しんで、その先にある何かを手に入れなければいけない。

死にゆく母を子供たちに見せよう、いや、見せなければいけないと思った。

スポンサーサイト

Tag:未分類  Trackback:0 comment:0 

プロフィール

スパイク

Author:スパイク
茨城県ひたちなか市在住41歳。2人の息子と男3人暮らし。
子供たちもだんだん大人になり、それぞれの人生を歩もうとしています。最後父ちゃんももうひと踏ん張りで、子供たちの成長の記録と父子家庭パパとしての考えを書き留めておこうと思っています。

執筆、講演、お仕事の依頼はメールフォームよりお気軽にどうぞ。
コメントもお気軽に送って下さい。とっても励みになるんで・・・^^




ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ

最新トラックバック
ご訪問ありがとうございます
現在の訪問者数
現在の閲覧者数:
お問い合わせやご連絡

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー
01 | 2015/02 | 03
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。